Network Worm(ネットワーク・ワーム)

§1.概要

全世界を震撼させ激怒させたWormの誕生は1988年のことでした。全世界必死の追求により、この世界最初のWormの創造主(Robert Tappan Morris Jr.)は捕獲されましたが、それまでに数多くのBSD、UNIXマシンが被害を蒙りました。
この後、世界中に損害を与えたことで末代まで語り継がれるであろうWorm(Blaster、Code Red、Loveletter、Melissa、MyDoom、Sasser、Sober)が産み出されることになります。
コンピュータWormはウィルスとは一線を画しています。古典的(複合化されていない)Wormは、それ自身の複製を作成しますが、ファイルに感染するよ うなことはありません。また、ファイルを巧みに取り扱うこともしません。Wormは単独で稼動するプログラムです。WormはPCからPCに乗り移ってい きます。一つのPCに自分自身をロードさせたWormは幾つかのクローンを産み落とします。これらクローンは、それぞれ暢気な放浪者のようにPCからPC に乗り移っていきます。

Wormの機能

  • ・ マシンをリモートコントロールする。
  • ・ 生贄となったマシン上でコピーを作成する。
  • ・ 新しいマシンに拡散する。

Wormの拡散方法

Wormは拡散するにあたり様々なネットワークシステムを使用します。その代表的なものは以下となります。
    E-Mail、インスタントメッセージ、ファイル共有(P2P)、IRCチャンネル、LAN、WAN等

  • ・ 大部分のWormはメール添付ファイルとして侵入を試みる。
  • ・ IRC、ICQメッセージ中のファイルとして侵入を試みる。
  • ・ 感染させるためのWebサイトやFTPサーバー上に保存されているファイルへのリンクとして侵入を試みる。
  • ・ P2Pネットワーク等を経由してアクセスしたファイルとして侵入を試みる。

極少数ですが拡散にファイルを用いないWormが存在します。これをファイルレスワームとかパケットワームと呼びます。
パケットワームの拡散手段はネットワークパケットで、直接生贄のマシンのRAMに侵入しコードを実行します。

Wormの侵入手段

Wormは上述の拡散方法を用いて各コンピュータの門前まで到達するわけですが、各コンピュータの内部に入らなければその能力を発揮できません。では、 Wormはどうやってこのゲートを突破するのでしょう?

  • ・ E-Mail本文中に添付ファイルを開くように甘い罠を仕掛ける。
  • ・ 外部ネットワークからアクセスするためにローカルマシンを開いたままにしているネットワークを狙う。
  • ・ OSとアプリケーションの脆弱性を狙う。

今日のWorm

今日のマルウェアは複合的創作物になっています。今日のWormはしばしばトロイの木馬としての機能を含んでいたり、生贄となったマシンの"exe"ファ イルに感染することができます。今日のWormは純粋なWormではありません。複合的脅威の下にあります。

Wormの分類

大部分のワームは突発的に重要な影響を発生させるように仕組まれています。そして、一つ以上の感染テクニックを使用し、一つ以上の伝播テクニックを使用し ます。Wormの分類は様々ですが、ここでは拡散手段の観点から分類しています。

  • ・ E-Mail Worms(E-Mailワーム)
  • ・ Instant Messaging Worms(インスタントメッセンジャーワーム)
  • ・ Internet Worms(インターネットワーム)
  • ・ IRC Worms(IRCワーム)
  • ・ File-sharing Networks Worms (ファイル共有ネットワークワーム)

§2.E-Mail Worms(E-Mailワーム)

E-Mailワームは感染したE-Mail経由で拡散します。Wormは添付ファイル中に存在しているかもしれません。この場合、Wormはユーザが添付 ファイルをクリックしたときに活性化します。あるいは感染したWebサイトへのリンクになっているかもしれません。この場合は、Wormは感染したサイト へのリンクをクリックしたときに活性化されます。
いずれにしても、拡散手段はE-Mailです。

E-Mailワームは通常以下の拡散手法を用います。
  • ・ Worm中のSMTP APIライブラリを使用しSMTPサーバーに直接接続する。
  • ・ MS Outlook サービス。
  • ・ Windows MAPI 機能(Windows上で電子メール機能を扱うための仕様)。

E-Mailワームは、侵入に成功するとクローンを産み落とします。更なる拡散のために生贄のマシンからメールアドレスを収集します。
  • ・ MS Outlookアドレスブックをスキャンする。
  • ・ アドレス帳、アドレスデータベースをスキャンする。
  • ・ Worm側が適切と認めるテキストベースでメールアドレスが含まれるそうな拡張子を持つファイルをスキャンする。例えば、 ".html"。
  • ・ メールボックスにある全てのメールに対しWormそれ自身のコピーを送信する。

このようなテクニックは全てのWormに共通するテクニックです。現在、Wormの中には共通のドメイン名を組み合わせて新たな送信アドレスを構築するも のさえあります。

§3.Instant Messaging Worms(インスタント・メッセンジャー・ワーム)

Instant Messagingワームはインスタントメッセージアプリケーション(MIRC、MSN Messenger、Yahoo IM、ICQ)を使用しローカルなコンタクトリスト上の全ての者に対し感染したWebサイトのリンクを送信することによって拡散します。
Jituxワームを持ち出すまでもないと思いますが、インスタントメッセージアプリケーションは個人の認識の如何を問わず、Wormをサイバー世界に燎原 の火のごとく拡散させることが可能です。この種のWormとリンクを送信するE-Mail Wormの相違は、リンクを送信するために選択したメディアが違うことだけです。

§4.Internet Worms(インターネットワーム)

インターネットワームは拡散するために以下のテクニックを使用します。
  • ・ ネットワークリソースにWormをコピーする。
    ワームは遠隔のマシンに位置していて、書きこみ権限のあるネットワークリソースに自身をコピーします。そして、ローカルなOSサービスを使用して利用可能 な全てのネットワークリソースのスキャンや脆弱性のあるマシンをインターネットでスキャンします。このようにして発見したマシンに接続を試み完全な制御を 獲得します。
  • ・ コンピュータもしくはネットワークに侵入するために OSの脆弱性を利用する。
    ワームはインターネットでパッチのあたっていないマシンを探します。即ち、未だ開発することが可能な深刻な脆弱性を持っているOSを探すわけです。ワーム はデータパケットを送信します。もしくはワームのボディーかダウンローダ機能を含むワームのソースコード部分のどちらかをインストールする要求を送信しま す。このコードが成功裏にインストールされたなら、次にワームの主要なボディーがダウンロードされます。いずれにしろ、この種のワームは一度インストール されればそのコードを繰り返し実行します。
  • ・ 公共のネットワークへの侵入。
    感染は二段階で行われます。第一段階として静的Webページのようなファイルサーバー上のサービスファイルに侵入します。第二段階として、クライアントが 感染したファイルにアクセスすることをじっと待っています。そして、このファイルがピックアップされると個別のマシンを攻撃します。生贄となったマシンは 更なる攻撃のための発射台として使用されることになります。
  • ・ Piggy-backing(便乗) : Worm を運ぶ能力を持った他のマルウェアを使用する。
    ウィルス製作者の中には新たなWormの拡散にワームやトロイの木馬を使用する者がいます。この種のWormの製作者は生贄のマシンにバックドアがインス トールされたことを確認します。バックドアをインストールされてゾンビと化したマシンはファイルをダウンロードし実行することを命令されます。

たいていのWormは二つ以上の伝播方法を組み合わせて使用する。潜在的生贄マシンにより効果的に侵入するために。

§5.IRC Worms(IRCワーム)

IRCは、Internet Relay Chatの略で、世界中に張られたIRCサーバーのネットワークを利用し、世界中の人々とリアルタイムで会話ができるようになっています。ネットワークリ アルタイム会議システムもIRCの一つです。
この種のWormのターゲットはチャットです。IRC Worms(IRCワーム)は、Internetワーム同様の拡散方法も使用します。感染したWebサイトのリンクや、感染したユーザから取得した宛先に 対し感染したファイルを送信します。
インスタントメッセージアプリケーション同様、個人の認識の如何を問わず、Wormをサイバー世界に一気に拡散させることが可能です。

§6.File-Sharing Networks Worms (ファイル共有ネットワークワーム)

WinMX等を使用してファイル交換している場合に感染する、いわゆるP2Pワームです。P2Pワームは通常ローカルマシン上に存在し、共有フォルダに自 分自身をコピーします。P2Pワームは一度でも共有フォルダ中に無害な名前を装ってそれ自身のコピーに成功すると、P2PワームがP2Pネットワークを引 き継ぐことになります。ネットワークは他のユーザに新しいリソースを知らせ、他のユーザがそれをピックアップしてくれるのをじっと待っています。もし、 フォルダが存在しなければP2Pワームは、そのフォルダさえ作成します。そして、P2Pユーザがこのファイルをピックアップすることで感染ファイルを実行 します。
Axamワームはこのような遠まわしな行動で悪意ある人々から最高の栄誉を勝ち得ています。